キム・ハノ詩集 4 | |
「あゝ、リム・スギョン」 語彙解説 |
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リム・スギョンは1989年にピョンヤンで行われた共産圏の国々の若者の祭典に韓国代表として単身参加した女子学生。 「統一の花」と朝鮮でもてはやされ、歌まで作られた。 祭典終了後、軍事境界線を越えて帰国することを主張し断食闘争を繰り広げ、主張どおりに境界線を越えて帰国したところで国家保安法違反で即時逮捕された。その当時朝鮮を訪問していたときの出来事を振り返り詠った作品。 彼女が数年前に日本でコンサートを開催しましたが、そこへ私が参加したレポートをご参考ください。 |
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テレビを見る ベイジンアジア大会開会式 各国旗、選手団の、げに華やかな行進 瞬時、共和国旗がひるがえる 熱い思い出…… 去年ピョンヤン世界青年学生祭 絢爛(けんらん)とオーバーラップした 174ヵ国参加 東洋一のメーデースタジアム 世界はひとつ、祖国はひとつ その行進の一番最後 「全大協」の旗を持つ一女子大生 それがリム・スギョン、君だった 二十万の見守る中 拍手は大地を揺るがした 私は妙香山へ案内される その途中の休養所 バルコニーから眺めると ちょうど自動車から君が現れた 握手攻めにあいながら、どうしたはずみか 君の眼はスーっと私の目と合った 激しく大きく手を振ると 君も両手を振り返し 笑顔がパァっと輝いた 地中海の海底の真珠も アーサー王のダイヤの冠も 色褪せよ、清らかな瞳 私はいつまでも手を振った 南の学生代表が 北の首都のまっただ中へ! いかにして君はやって来たのか? 一つの目的、一つの祖国 命をかけた可燐な乙女よ 心に童話が浮かぶ 森が火事となり動物は皆逃げた しかし小鳥は逃げなかった 小さなバケツを口にくわえ 水を運んでは消しにかかった 十回、二十回、百回、二百回 小鳥はついに力つき 火の森へ落ちて死んだ 分裂の火を消すためにリム・スギョン 君は死線を越えたのだ 火の森へ、もう落ちてはならない あゝ境界線 再び南へ帰り来る 平和の燕、統一の花 待ち受けたのは拷問・重刑 耐えて戦うリム・スギョン 統一の良心は第二の君、第三の…… 何万、何十万、何百万 そして民衆は勝利しよう 勝利のグラウンドで勝利の旗をなびかせ 月桂冠を髪にいただき凱旋門をくぐる 君の英姿が映されよう テレビではアジア大会アナウンサー 早口言葉で放送する 興奮の波高まるにつれ 急に空しさが広がった リム・スギョン 君が私の心を支配してしまったから テレビのスイッチを切り 君の事を瞑想した リム・スギョン、体を大切に…… II 民衆より |
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ベイジン(베이징) | 北京 |
共和国 | 朝鮮の人と在日同胞は朝鮮民主主義人民共和国のことを指してこう呼びます。 |
ピョンヤン世界青年学生祭 | 「第十三回世界青年学生フェスティバル」のことで、1989年の夏に史上最大の 国と地域の参加で大規模に開催されたイベント。共産圏の国々の代表と、西側の共産主義志向の青年団体の代表が一同に会し、交流を深め、信頼を深めるための4年に一回の祭典。ピョンヤン祭典以後、ピョンヤンほどの規模と組織力で実行できる国が無かったのと、情勢の変化により最近まで開催されませんでしたが、最近キューバで開催されたという話を聞いています。 |
メーデースタジアム | ピョンヤン市内の大同江の三角州 上に建てられた、10~20万人収容の巨大スタジアム。祭典のメイン会場になった。 |
「全大協」 | 「全国大学生協会」。韓国学生運動の大きなグループのひとつ。当時は北朝鮮寄りの運動を繰り広げていた。 |
妙香山[ミョヒャンサン] (묘향산) |
朝鮮で金剛山と並ぶ、景色が美しい山。 |
休養所 | 高速道路の途中にあるドライブインみたいなもの。 |