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キム・ハノ詩集 3 在日の詩
「ピョンヤン・タタミ」
第二次大戦終わったら
日本はアメリカかぶれした
チューインガム・チョコレート
街でかんだり食べたりし
キャメル・ラッキーストライク
吸えばたいしたものだった
一九七〇年代
高速道路全国に
ずんずんのびる時期だった
車に乗りハイスピード
出してながめる大都市は
ビル、ビル、みなビルディング
コンクリートのジャングルだ
しかし眼にさだかな変化あり

日本人のリバイバル
住宅地にひんぱんだ
鉄筋よりコンクリより
木造建てが懐かしい
タタミの上で寝てみたい
そういう志向が増えてきた
タタミ屋さんは忙しい
ところがここである人は
たいへんなこと発見した
彼はあるとき北へ行き
稲刈り後に残された
わらをつぶさに調べると
どうもヒントがわいたらしい

そのひと束を持ち帰り
タタミ屋さんと話し合う
「このわらちょっと見てください」
そこでタタミ屋何日も
関係者集め調査した
「まさにそのわら大丈夫
日本のわらより強いこと
証明できた」と興奮する
早速彼はタタミ屋と
ピョンヤン直行
タタミ工場すぐ建てた
定期的に一万枚
タタミを現地加工して
ナムポ港で積荷する
日立港で荷降ろしだ

このタタミ日本人が使ってる
しかし誰もこのタタミ
ピョンヤン製とは気がつかぬ
ピョンヤン・タタミはよいタタミ
コンクリートは丈夫だが
四季の温度に左右され
洋式ベッドは湿気を吸わぬ
それより木造・タタミ部屋
湿気よく吸い寝ごこちよい
自然の感覚ぴたりして
健康に良くさわやかだ
厳冬生きたタタミゆえ
ピョンヤン・タタミはしん強く
日本でさらに広がろう

朝鮮、日本はお隣だ
なのに国交正常化
半世紀もたつという
それでもまごまごしているよ
「なぜぎくしゃくするのだろう?」
そう思わぬ人はいない
タタミ屋さんに習いなさい
こんな小さな片隅で
ちゃんと握手しているよ
「おはよう、おやすみ、またあした」
ちゃんとあいさつしているよ


(I 生活)

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語彙解説
ナムポ港〜ピョンヤンの玄関といわれる朝鮮最大の港。
日立港〜茨城県にある港。

この詩の主人公は、キム先生の親戚の方です。
「北へ」というのは「朝鮮半島の北半部へ」という意味です。